⽔素・燃料電池技術開発戦略
令和元年9⽉18⽇
⽔素・燃料電池戦略協議会
⽬次
1.「⽔素・燃料電池技術開発戦略」の位置づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.我が国の技術開発の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
3.諸外国の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
4.⽔素・燃料電池技術の重点分野と重点項⽬・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(1)燃料電池技術分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(2)⽔素サプライチェーン分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
(3)⽔電解技術分野・その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
5.効果的、効率的な技術開発に向けた取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(1)技術開発プロジェクト評価、広報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(2)ニーズとシーズのマッチング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
(3)諸外国との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
(4)今後の対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
1.「⽔素・燃料電池技術開発戦略」の位置づけ
⽔素は、利⽤時に⼆酸化炭素(CO2)を排出しないことに加え、エネルギーキャリアとして再⽣可能エネルギーを貯蔵、輸送、利⽤できることから、地球温暖化対策及びエネルギー安全保障の切り札となるポテンシャルがある。このため我が国は、⽔素社会実現に向けて将来⽬指すべき姿や⽬標として官⺠が共有すべき⽅向性・ビジョンであるとともに、その実現に向けた⾏動計画を世界ではじめて取りまとめた⽔素基本戦略を 2017 年 12 ⽉に策定した。さらに、2018 年 7 ⽉には第 5 次エネルギー基本計画が策定され、⽔素を再⽣可能エネルギーと並ぶ新たなエネルギーの選択肢とするため、環境価値を含めた⽔素の調達・供給コストを従来エネルギーと遜⾊のない⽔準まで低減させていくことなど、エネルギー政策における⽔素エネルギーの⽬指すべき⽅向性が盛り込まれた。こうした背景の下、⽔素基本戦略及び第 5 次エネルギー基本計画で掲げられた⽬標の実現に向け、必要となる要素技術のスペック及びコスト⽬標を明確化するとともに、官⺠によるアクションプランを定め、東京宣⾔(⽔素閣僚会議(2018 年 10 ⽉))などを反映し、2019 年 3 ⽉に⽔素・燃料電池戦略ロードマップ
(以下単にロードマップとする)の⼤幅な改訂を⾏った。
ロードマップは、⽔素社会実現に向けた産学官のアクションプランと位置づけられている。⺠間企業、⼤学・研究機関、国・⾃治体がそれぞれの役割を果たすことにより⽬標を達成していくことを⽬指している。技術開発プロジェクトの企画⽴案を担う経済産業省として、2019 年6⽉に初めて開催した「⽔素・燃料電池プロジェクト評価・課題共有ウィーク」における議論を反映し、技術開発の重点分野の特定や早急に取り組むべき技術的課題などを明らかにすべく「⽔素・燃料電池分野における技術開発の重点分野について」を取りまとめた。これを踏まえ、産学官が⽔素・燃料電池分野の技術的課題を協⼒して克服することにより、ロードマップにおいて⽰した⽬標を達成するためにも「⽔素・燃料電池技術開発戦略」を定めることとした。
2.我が国の技術開発の状況
経済産業省は、1970 年代のサンシャイン計画やムーンライト計画以降、⽔素・燃料電池の技術開発プロジェクトを主導してきており、2019 年度の予算は約 630 億円(経済産業省計上予算。2018 年度補正予算含む。)となっている。
こうした中、我が国は、燃料電池⾃動⾞(FCV)や家庭向け定置⽤燃料電池(エネファーム)の世界初の市場投⼊や、⽔素ステーションの整備など、⽔素・燃料電池技術の社会実装で世界をリードしている。最近では、⽔素サプライチェーンの構築に向け、効率的な⽔素の輸送・貯蔵を可能とするエネルギーキャリア技術について、その開発・実証に世界に先駆けて着⼿している。2015 年に豪州政府と液化⽔素の輸送・貯蔵の⼤規模技術実証プロジェクト、また、ブルネイ政府と有機ハイドライド(MCH)をエネルギーキャリアとした⽔素サプライチェーン構築の⼤規模技術実証を開始した。これらプロジェクトは、現在、関連設備の製造・設置が進められており、2020 年には豪州及びブルネイから⽇本への⽔素の輸送が実際に⾏われる予定となっている。また、グリーンアンモニアコンソーシアムを中⼼に、アンモニアバリューチェーン構築の検討が進められている。
3.諸外国の状況
次世代のエネルギーとして⽔素は海外でも注⽬を集めている。2017 年に我が国が世界ではじめて⽔素についての国家戦略として⽔素基本戦略を定めたことに続き、フランス(2018 年)、韓国(2019 年)などでも⽔素に関する国家戦略が定められている。また、⽶国では H2@Scale として⽔素エネルギーの利⽤拡⼤に取り組んでいる。こうした中、⽔素基本戦略では、グローバルな動向を把握し、歩調を合わせながらも、我が国が⽔素社会実現において世界をリードしていく⽅針が⽰されている。
⽔素・燃料電池分野の技術開発に関する諸外国の具体的な状況としては、欧州では、 FCH2JU(第 2 期燃料電池⽔素共同実施機構)が 1.3 億ユーロの予算(2018 年度)を措置しており、Power-to-gas 関連技術を中⼼とした基礎研究、要素技術開発のほか、燃料電池バス(約 140 台)の運⾏に関する実証研究や、Power-to-gas 実証研究(ドイツを中⼼に 30 箇所以上)、都市ガス導管に⽔素を注⼊する実証事業などが⾏われている。また、製鉄所や製油所などの産業プロセスや、⽕⼒発電所での CO2フリー⽔素の利⽤が検討されている。
⽶国では、エネルギー省(DOE)は⽔素関係で 1.7 億ドルの連邦政府予算(2018 年度)を措置しており、燃料電池、⽔素燃料、⽔素インフラなど、基礎研究や要素技術開発を中⼼にR&Dが実施されている。また、カリフォルニア州を中⼼に 7,000 台以上の FCV が普及しており、燃料電池を動⼒源とする⻑距離トラックの実証事業が進められている。
他⽅、⽔素・燃料電池分野にはまだ多くの技術的課題が残っている。このため、欧州、⽶国ともに、公的機関は基礎研究や要素技術開発を中⼼に⽀援している状況である。⽔素・燃料電池分野で我が国が引き続き世界をリードしていくためには、⼤規模実証のみならず、我が国でも基礎研究や要素技術開発を更に強化していく必要があり、研究開発を強化したポートフォリオとしていく。
4.⽔素・燃料電池技術の重点分野と重点項⽬
⽔素は、利⽤時に CO2を出さないという環境適合性、特定の地域に依存せず多様なエネルギー源から製造できるというエネルギーセキュリティ確保の双⽅を満たすエネルギーである。これらを実現するために、⽔素の製造・貯蔵・利⽤の⼀気通貫の技術の実⽤化とともに、⼤幅なコスト低減が必要である。現状では我が国はこうした技術の開発で世界をリードしており、今後も引き続き維持し、さらに加速化していくため、 ①燃料電池技術分野、②⽔素サプライチェーン分野、③⽔電解技術分野の3分野、またこれらの分野における計 10 項⽬を重点分野・重点項⽬と位置づけ、研究開発を進め相互に連携させることにより、⽔素社会の実現を⽬指していく。
(1)燃料電池技術分野
⾃動⾞⽤燃料電池については、ロードマップにおいて、燃料電池システム及び⽔素貯蔵システムのスペック及びコスト⽬標が⽰され、その実現に向けた技術開発の⽅向性がアクションプランとして記載されるとともに、産学官連携による多層的な技術開発体制を構築していく必要性が指摘されている。FCV メーカー等の業界ニーズに基づき触媒や電解質、膜・電極接合体(MEA)等に関する研究開発が着実に進められている⼀⽅、ロードマップに⽰された 2030 年以降の⼤量普及期に向けては更なる出⼒密度の向上、⾼負荷運転の実現、⾼耐久化に資する基盤技術開発を推進する必要がある。
定置⽤燃料電池については、ロードマップにおいて、①家庭⽤については、セルスタックの⼩型化を⽬指した⾼効率化、スタック構造及び補機部品の⾒直しによるシステムの⼩型化、脱硫装置の低コスト化等の技術開発の⽅向性、②業務産業⽤については、セルスタックの⾼効率・⾼出⼒密度化、補機類の部品点数削減や汎⽤部品への代替等による低コスト化、燃料電池システムの負荷追従性向上・簡素化等の技術開発の⽅向性が、アクションプランとして⽰されている。また、耐久性迅速評価に係る基礎研究が業界ニーズに基づき着実な成果を上げつつあり、業務⽤燃料電池システムの技術実証により今後の市場展開につながることが期待される。他⽅、定置⽤燃料電池の更なる市場拡⼤に向けてはモノジェネとして成⽴しうる超⾼効率化や更なる耐久性の向上に資する基盤技術開発を⾏わなければならない。さらに、燃料電池の⾶躍的な普及のためには、乗⽤⾞以外の多⽤途への展開による低コスト化を図る必要がある。
これらを踏まえ、⾃動⾞⽤燃料電池及び定置⽤燃料電池については⽴ち上がりつつあるビジネスベースの市場の中で明らかになった低コスト化や⾼耐久化といった課題 や、2030 年以降を⾒据えた抜本的なイノベーションに向けた研究課題について、産学官連携による多層的な技術開発体制を構築して取り組んでいく。
<具体的な技術開発事項>
【固体⾼分⼦形燃料電池(PEFC) 主に⾞載⽤】
・低⽩⾦触媒、⾮⽩⾦触媒及びラジカル低減触媒の開発
・電解質膜の⾼伝導、薄膜化、ガス透過抑制及び⾼耐久化
・ガス拡散層の低抵抗化、ガス拡散性及び排⽔性の向上
・セパレータの⾼耐久化、低抵抗化、⾼排⽔化及び良プレス成形性
・シール材のガス・冷媒透過抑制及び⽣産性向上
・⾼温作動における性能を維持する触媒、担体及び電解質膜等の開発
・極限環境下での性能及び耐久性に関する技術開発
【固体酸化物形燃料電池(SOFC) 主に定置⽤】
・発電端効率65%超(低位発熱量)のセルスタック及びシステムの開発(プロトン導電性、モノジェネ化)
・セルスタックの耐久時間(13 万時間以上)の向上及び起動時間の短縮化
・システムの燃料利⽤率の向上
・バイオガスなど燃料多様化に対応可能なセルスタックの開発
(燃料電池共通技術)
・燃料電池構成部材の連続製造プロセスの技術開発
・燃料電池を活⽤したエネルギーマネージメントシステムの開発
・性能及び耐久に関する加速劣化試験プロトコル及び劣化モデルの確⽴
【補機・タンク等関連システム】
・移動体⽤⽔素タンクの炭素繊維の使⽤量低減及び容器製造プロセス効率化等の技術開発
・燃料電池システム関連の補機類も含めたシステム最適化、低コスト化のための技術開発
・乗⽤⾞以外における燃料電池システムの多⽤途活⽤に資する技術開発
(2)⽔素サプライチェーン分野国際サプライチェーン構築については、ロードマップにおいて、⽔素製造、⼆酸化炭素回収貯留(CCS)、⽔素の貯蔵、輸送、利⽤の各段階について、2022 年度頃を⽬途とした主要な要素技術の必要スペック⽬標等が提⽰されるとともに、アクションプランとして 2022 年度及び 2025 年度までの研究開発の⽅向性が⽰されている。ロードマップの達成のためには 2022 年度頃に向けた基盤技術の開発を引き続き実⾏するとともに、その成果を精査した上で、さらに 2025 年度に向けた研究開発を実施していくことが重要である。同時に、研究開発の⽅向性を評価するために各要素技術開発の⽔素コスト低減への寄与度に関する定量評価の実施や、トレードオフとなる⽔素コストと CO₂排出量削減量の関係整理を⾏っていく必要がある。
⽔素発電については、ロードマップにおいて、2030 年頃の⽔素発電の商⽤化を⽬指して技術の確⽴及び⽔素コストの低減に向けた取組を⾏っていくことが⽬標として定められている。また、⽬標達成のためのアクションプランとして、発電設備の排熱を MCH やアンモニアなどの⽔素キャリアからの脱⽔素反応において利⽤するプロセスの⾼効率化・低コスト化の技術開発や、⽔噴射を⾏わずに窒素酸化物(NOx)を抑制する技術開発、将来的な⽔素専焼発電の実現に必要な技術開発(低 NOx 燃焼器の開発、燃焼振動対策、冷却技術の開発等)などの⽅向性が⽰されている。単体技術だけでなくシステム全体として実⽤化に向けた確実なステップを進めるため、⽔素発電に⽔素を供給する機器(地上タンク、ボイルオフガス(BOG)圧縮機、MCH 脱⽔素設備など)において、⼩規模の貯蔵設備試作・試験などで⼤型化に向けた課題を抽出する等の検討が必要である。
⽔素ステーションについては、ロードマップにおいて、整備費・運営費の低減に向けて要素技術毎のコスト⽬標が定められ、アクションプランとして、シール材・ホースの耐久性向上、次世代充填技術の開発を⽬指すほか、電気化学式圧縮機などについても開発を実施していく⽅向性が⽰されている。先述のコスト⽬標の達成に向けては、規制⾒直しを進めるとともに、以下に挙げる要素技術開発を着実に実施していくことが重要である。
<具体的な技術開発事項>
【⼤規模⽔素製造】
・褐炭利⽤のガス化炉等設備の⾼効率化、低コスト化に向けた技術開発
・⽔電解装置の⼤型化、⾼効率化のための技術開発(後掲)
【輸送・貯蔵技術】
・⽔素液化効率の向上
・ローディングに対応した低温⽔素ガス⽤の圧縮機の開発
・ローディングアームの⼤型化、低コスト化のための技術開発
・⽔素発電に対応した液化⽔素昇圧ポンプの開発
・海上輸送⽤及び陸上貯留⽤タンクの⼤型化に適した断熱システム等の開発
・極低温域で使⽤する材料開発及び評価技術の開発(⾦属材料及び樹脂材料)
・⽔素化/脱⽔素触媒の性能向上によるトルエンロス量の低減
・排熱利⽤等による脱⽔素化プロセスの低コスト及び低炭素化
・電解合成等の新規触媒開発によるシステムの低コスト化
【⽔素発電】
・環境性(低 NOx)と⽔素の燃焼特性への対応、⾼効率発電を実現する燃焼器の開発
・発電設備等の排熱を利⽤した MCH やアンモニアなどの⽔素キャリアからの脱
⽔素反応の⾼効率化、低コスト化
【⽔素ステーション】
・遠隔監視による⽔素ステーション運転の無⼈化や設備構成等の⾒直しに向けたリスクアセスメント
・汎⽤⾦属材料の⽔素特性等に係るデータ取得
・蓄圧器の寿命延⻑、新たな検査⽅法の開発
・ホース及びシール材の更なる耐久性向上
・新たな充填プロトコルの開発(⽔素供給温度緩和等)
・運⽤データの解析の結果等に基づく、⽔素ステーションの各機器の仕様や制御
⽅法の標準化・規格化
・圧縮機の⾼効率化、低コスト化(電気化学式圧縮機、熱化学式圧縮機の開発等)
・液化⽔素ポンプの開発
・燃料電池トラック等、新たなアプリケーションに対応した充填、計量技術の開発
・⼤容量、軽量容器の開発
・⾼容量、⾼耐久な⽔素貯蔵材の開発及び⽣産技術の確⽴
(3)⽔電解技術分野・その他
⽔電解装置については、ロードマップにおいて、実現すべき各種コストやエネルギー消費量などに関する、スペック及びコスト⽬標が掲げられ、その実現のために実⾏すべき研究開発の⽅向性がアクションプランとして⽰されている。周辺機器の低コスト化、エネルギー消費量の低減が課題であり、補機も含めたシステムとしての最適化にも併せて取り組む必要がある。
⽔電解技術とあわせて Power-to-Gas の利⽤サイドとして、⽔素のガス管注⼊やメタネーションなどの熱利⽤、産業プロセスにおけるCO2フリー⽔素の活⽤については、今後検討を進めていく必要がある。
また、2050 年を⾒据えた中⻑期の⽔素社会の実現、⽔素利⽤の本格普及のためには、⽔素の⾰新的技術の開発も不可⽋である。ロードマップでは、基礎・基盤研究の段階から、社会実装に不可⽋なコスト削減の⾒通しや、⼤規模導⼊の実現可能性、既存のインフラとの適合性などの課題を確認し、環境と経済成⻑を両⽴させた将来の社会像を踏まえた上で、中⻑期的な技術開発の取組状況や⽅向性を定期的に検討することの重要性が指摘されている。これを踏まえ、関係省庁とも連携しながら、⾰新的技術の開発にも取り組んで⾏く。
<具体的な技術開発事項>
【⽔電解技術】
(アルカリ形⽔電解装置・固体⾼分⼦膜(PEM)形⽔電解装置)
・電流密度の制御幅拡⼤のための技術開発
・エネルギー消費量(kWh/Nm3)の低減
・電解枠の⾦属使⽤量の低減等による設備コスト(円/kW)の低減
・メンテナンスコスト(円/(Nm3/h)/年)の低減
・劣化率(%/1000 時間)の低減
・触媒での⾦属使⽤量(mg/W)の低減
・負荷変動時の電極等の構成機器の耐久性向上
(アニオン交換膜(AEM)形⽔電解装置)
・電解質材料、触媒材料等の劣化メカニズム解明と耐久性向上
・セルスタックの⾼効率化、⾼耐久化、低コスト化等
(固体酸化物形電解セル(SOEC))
・セルスタックの耐久性向上
・低コスト化のためのセルスタック製造技術の開発
(⽔電解技術共通基盤)
・⽔電解反応解析及び性能評価等基盤技術の開発
・補機も含めた⼀体的なシステム最適化のアルゴリズム開発・メタネーションプラントの⾼効率化、低コスト化及び⾼耐久化
【産業利⽤等アプリケーション】
・CO2フリー⽔素による代替に関する経済性、CO2削減効果の評価
・製鉄プロセスにおける⽔素活⽤ポテンシャルの検討(COURSE50 プロジェクト、
⽔素還元製鉄技術)
・⽔素利活⽤のライフサイクルアセスメント(LCA)評価
・既設パイプライン網への⽔素注⼊、利⽤のポテンシャル検討
・⽯油精製、⽯油化学等のコンビナート地域における CO2フリー⽔素の利⽤、融通の検討
・電化の困難な⾼位熱の⽔素代替技術の開発
・⽔素を燃料として⽤いるアプリケーションの拡⼤に資する技術開発
【⾮連続な⾰新技術】
・⾼効率な⽔電解、⼈⼯光合成、⽔素⾼純度化透過膜等の新たな⽔素製造技術に係る研究
・⾰新的⾼効率⽔素液化機の開発
・⻑寿命液化⽔素保持材料の開発
・低コストかつ⾼効率で⾰新的なエネルギーキャリアやその製造技術の開発
・コンパクト、⾼効率、⾼信頼性、低コストな⾰新的燃料電池の技術開発
・CO2フリー⽔素と⼆酸化炭素を利⽤した⾰新的化学品合成⽅法の開発
5.効果的、効率的な技術開発に向けた取組
(1)技術開発プロジェクト評価、広報
⽶国では AMR(Annual Merit Review)として DOE が⽀援する⽔素関連技術開発について、あらゆる事業を対象に公開の場で毎年技術評価を実施している。将来技術の実⽤化に向けて産学官が連携して成果を出していくためには、限りあるリソースを有効に利⽤する必要があり、客観的で適切かつ厳格な評価が必要不可⽋である。
このため、経済産業省、国⽴研究開発法⼈新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、令和元年 6 ⽉17 ⽇〜21 ⽇に「⽔素・燃料電池プロジェクト評価・課題共有ウィーク」を初めて開催し、公開の場において、経産省・NEDO が⽀援する 22 事業を対象に技術評価を実施した(延べ 1,000 ⼈程度が参加)。今後、技術開発事業の推進にあたり、このような評価結果を踏まえ、事業の適切な企画、⽴案及び実施に努めていく必要がある。また、⽔素の普及拡⼤に向けては、広く社会の理解を得ながら実装を進めていくことが重要であり、産学官による適切な情報発信など、広報活動に取り組んでいく必要がある。
(2)ニーズとシーズのマッチング ロードマップに基づき、将来的な実⽤化に向けて産学官が連携して効率的に技術開発を実施していくためには、最終的な製品化を担う⾃動⾞メーカー等が必要とする要素技術やその技術的課題など、製品化に向けた技術開発の「ニーズ」情報を⼤学・研究機関や部素材メーカー等の研究者・技術者に共有し、そのニーズを踏まえた上で、研究者・技術者が技術開発を⾏っていくことが重要である。また同時に、これら研究者・技術者の側からも、⾃らが持つ技術や知⾒等の「シーズ」情報について、製品化を担うメーカー側に提⽰していくことが、ニーズとシーズをマッチングしていくために重要である。
こうした考え⽅の下、本年1⽉に NEDO は「FCV 課題共有フォーラム」を開催し、
FCV の開発を進める複数の⾃動⾞会社や業界団体から、⼤学・研究機関や部素材メーカー等の研究者・技術者に対して、解決すべき技術課題としてのニーズを説明・共有する場を初めて設けた。また、⽔素・燃料電池プロジェクト評価・課題共有ウィークにおいては、⽔素サプライチェーン、⽔素発電、Power-to-Gas、⽔素ステーション及び燃料電池の各分野について、ニーズ及びシーズの説明・共有を⾏い、意⾒交換を⾏った。今後も、こうした多様な取組を通じて、⽔素・燃料電池関連技術の実⽤化を達成していく必要がある。
(3)諸外国との連携 技術開発の限りあるリソースを有効に活⽤していくためには、⽇本の競争⼒を維持するために特定の分野に集中的にリソースを配分するとともに、諸外国における動向を的確に把握し、世界の⽔素関連研究機関のネットワークを構築して国際共同研究を推進するなど、戦略的な対応を⾏っていくことが重要である。⽔素閣僚会議なども活
⽤し、今後、本戦略に基づき国際的な連携を呼び掛けていく。
⽔素・燃料電池プロジェクト評価・課題共有ウィークにおいても、NEDO による⽶国及び欧州の技術開発動向の調査結果が説明、共有されたが、今後もこうした諸外国の動向調査は継続的に実施し、国際連携を強化していく。
(4)今後の対応
本戦略は、NEDO における⽔素・燃料電池関連の技術開発プロジェクトの企画、マネジメント、事前評価、中間評価、事後評価等において活⽤する。本戦略で提⽰した各重点分野の技術開発事項の詳細については、NEDO燃料電池・⽔素技術開発ロードマップで⽰していくものとする。また、本戦略で特定した重点的に取り組むべき各技術開発の実施にあたっては、産学官で技術の熟度やリスクの⼤きさに応じ適切な役割分担を図りながら実⾏する。国としても効果的・効率的な研究投資の実施に向け関係省庁と連携しながら取り組んでいく。また、毎年実施されるロードマップのフォローアップや、技術開発プロジェクト評価の結果、海外の動向等を踏まえ、本戦略は必要に応じて⾒直しを⾏っていくこととする。
参考 ⽔素・燃料電池戦略協議会委員等名簿 ※令和元年9⽉ 11⽇時点
<委員>(敬称略)(※五⼗⾳順)
浅⾒ 孝雄 ⽳⽔ 孝 遠藤 英樹 ⼤⾕ ⽂夫 ⼤濵 敬織 ⼩川 洋 座⻑ 柏⽊ 孝夫 桑原 豊 崎⽥ 裕⼦ 清⽔ 成信 ⽵内 純⼦ 出⼝ 雄吉 寺師 茂樹 並⽊ 祐之 原⽥ ⽂代 藤原 正隆 三部 敏宏 宮部 義幸 吉⽥ 泰⼆ 渡邉 聡 | ⽇産⾃動⾞株式会社 専務執⾏役員 アライアンス SVP 研究・先⾏技術開発 担当 東京ガス株式会社 代表取締役副社⻑執⾏役員 エネルギーソリューション本部⻑・電⼒本部⻑ 千代⽥化⼯建設株式会社 理事 東芝エネルギーシステムズ株式会社 エグゼクティブアドバイザー 株式会社神⼾製鋼所 代表取締役副社⻑執⾏役員 福岡県知事 東京⼯業⼤学 特命教授 JXTG エネルギー株式会社 取締役常務執⾏役員 ジャーナリスト・環境カウンセラー 電気事業連合会 専務理事 NPO 法⼈ 国際環境経済研究所 理事・主席研究員 東レ株式会社 代表取締役副社⻑ トヨタ⾃動⾞株式会社 取締役・副社⻑ 川崎重⼯業株式会社 代表取締役副社⻑執⾏役員 株式会社⽇本政策投資銀⾏ 企業⾦融第5部 担当部⻑ ⼤阪ガス株式会社 代表取締役副社⻑執⾏役員 本⽥技研⼯業株式会社 常務執⾏役員 パナソニック株式会社 専務執⾏役員 三菱⽇⽴パワーシステムズ株式会社 常務執⾏役員 岩⾕産業株式会社 技術・エンジニアリング本部⻑ 取締役専務執⾏役員 |
<オブザーバー>
燃料電池実⽤化推進協議会
国⽴研究開発法⼈産業技術総合研究所
国⽴研究開発法⼈新エネルギー・産業技術総合開発機構
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付
⽂部科学省研究開発局環境エネルギー課
国⼟交通省総合政策局環境政策課
国⼟交通省⾃動⾞局環境政策課
国⼟交通省海事局海洋・環境政策課
環境省地球環境局地球温暖化対策課
環境省⽔・⼤気環境局⾃動⾞環境対策課
経済産業省産業技術環境局エネルギー・環境イノベーション戦略室
経済産業省製造産業局素材産業課
経済産業省製造産業局⾃動⾞課戦略企画室
経済産業省産業保安グループ⾼圧ガス保安室
経済産業省産業保安グループ電⼒安全課資源エネルギー庁資源・燃料部政策課燃料政策企画室
資源エネルギー庁電⼒・ガス事業部ガス市場整備室
資源エネルギー庁電⼒・ガス事業部電⼒基盤整備課電⼒供給室
<事務局>
資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギーシステム課/⽔素・燃料電池戦略室
⽔素・燃料電池戦略協議会 開催経緯
<第 1 回> 平成 25 年 12 ⽉ 19 ⽇ 議題︓「⽔素・燃料電池について」
「⽔素・燃料電池戦略協議会の主な論点」
<第 2 回> 平成 26 年 5 ⽉ 28 ⽇ 議題︓「取りまとめに向けた議論」
<第 3 回> 平成 26 年 6 ⽉ 19 ⽇ 議題︓「取りまとめに向けた議論」
※平成 26 年 6 ⽉ 23 ⽇ ⽔素・燃料電池戦略ロードマップ 策定・公表
<第 4 回> 平成 27 年 6 ⽉ 11 ⽇ 議題︓「ロードマップの進捗状況」
「ロードマップ策定から環境変化と新たな論点」
<第 5 回> 平成 27 年 11 ⽉ 11 ⽇
議題︓「ロードマップ記載の⽬標達成に向けての⽅針等」
<第 6 回> 平成 28 年 2 ⽉ 17 ⽇ 議題︓「ロードマップ改訂の背景とポイント」
「ロードマップ改訂の⽅向性についての議論」
<第 7 回> 平成 28 年 3 ⽉ 16 ⽇
議題︓「ロードマップ改訂の取りまとめについての議論」
※平成 28 年 3 ⽉ 22 ⽇ ⽔素・燃料電池戦略ロードマップ 改訂・公表
<第 8 回> 平成 29 年 3 ⽉ 10 ⽇ 議題︓「⽔素・燃料電池戦略ロードマップの進捗状況」 「⽔素ステーション関連規制⾒直しの取組」
「CO2フリー⽔素ワーキンググループ報告書」
<第 9 回> 平成 29 年 6 ⽉ 1 ⽇ 議題︓「第 1 回再⽣可能エネルギー・⽔素等関係閣僚会議の開催について」
「⽔素ステーション普及に向けた新たな枠組みについて」
「⽔素ステーションの戦略的配置に関する調査・分析結果について」
「⽔素ステーション関連規制⾒直し進捗について」
「⽔素発電/サプライチェーンシナリオについて」
「IPCC における⽔素製造に係る CO2排出量評価⽅法の検討について」
<第 10 回> 平成 29 年 9 ⽉ 22 ⽇
議題︓「⽔素基本戦略について」
<第 11 回> 平成 29 年 11 ⽉ 6 ⽇
議題︓「⽔素基本戦略たたき台について」
<第 12 回> 平成 29 年 12 ⽉ 7 ⽇
議題︓「⽔素基本戦略(案)について」
<第 13 回> 平成 30 年 7 ⽉ 5 ⽇ 議題︓「第 5 次エネルギー基本計画・⽔素基本戦略について」
「国際連携強化の⽅向性について」
「JHyM 設⽴・⽔素ステーションの整備計画について」
「規制⾒直しの取組状況について」
「⽔素・燃料電池戦略ロードマップの進捗状況について」
「⽔素・燃料電池戦略ロードマップの主な⾒直しについて」
<第 14 回> 平成 30 年 12 ⽉ 21 ⽇
議題︓「⽔素・燃料電池戦略ロードマップ改訂の⽅向性
〜新たなアクションプランの策定について〜」
<第 15 回> 平成 31 年 2 ⽉ 25 ⽇
議題︓「⽔素・燃料電池戦略ロードマップ(案)について」
<第 16 回> 平成 31 年 3 ⽉ 12 ⽇ 議題︓「⽔素・燃料電池戦略ロードマップ改訂について」
「⽔素・燃料電池戦略ロードマップのフォローアップについて」
※平成 31 年 3 ⽉ 12 ⽇ ⽔素・燃料電池戦略ロードマップ 改訂・公表
<第 17 回> 令和元年9⽉11⽇ 議題︓「⽔素社会実現に向けた国際連携について」
「⽔素・燃料電池戦略ロードマップ評価 WG の開催報告」
「⽔素・燃料電池技術開発戦略の策定について」